昨日、近くのラーメン屋が食べ放題をやっていると聞いた私。ただ、そこのラーメンは濃い味なのに、食べ放題は朝しかやっていないらしい。まぁ、それが商売なんだろう。それに、そこのラーメン屋は、本当にあまり人気が無いらしい。建っている場所も、ひっそりとしていて、この辺りでは珍しく、周りには高いビルも無い。だけど、私にとっては、何の問題も無い!!ってわけで、朝からそのラーメン屋へ向かっている私なんだけど・・・・・・。
「どうして、ネウロまで来るかな・・・。」
「そんなこともわからないのか、このゴミムシめ。」
いや、わかるけどさ・・・。わかるからこそ、そう文句も言いたくなるんだよ・・・。
「だって、ネウロが来るってことは・・・。」
「あ!いた!!弥子ちゃん!!」
そんな私の愚痴は、とある少女の声を聞いて、先を話すことはなかった。・・・そんな私の隣でネウロが舌打ちをした。
・・・・・・そっか!このまま続けて、愚痴を言ってたら、絶対ネウロは何かするつもりだったんだ・・・!!!どこの誰かは知らないけれど、ありがとう!!そう思って、あらためて、その子を見ると・・・。
「あれ・・・?もしかして・・・、ちゃん?」
「よかったぁー・・・、覚えてくれてた?」
そう言ってニッコリと笑ったその少女の顔は、私の記憶の中でもいつも可愛く笑っているちゃんと一致した。
「先生、こちらは・・・?」
「えぇ〜っと・・・。中学の頃の友達のちゃん。」
中学時代、仲が良かった友達。と言っても、頻繁に遊んだりするような仲じゃなかったから、私が高校を受験して、離れ離れになってしまってからは、1度も会ったことがなかった。
「はじめまして。・・・えぇっと、弥子ちゃん、こちらの方は・・・もしかして、カレ・・・!!」
「違いますよ。こんな低能な奴なんか、お付き合いできませんから。僕は、先生の助手で、ネウロと申します。」
「・・・そっか。弥子ちゃん、探偵さんだもんねぇ・・・。」
ネウロが猫を被ってる所為で、私が悪い奴になってるじゃない・・・。もちろん、『ネウロ=低能な奴』ではなく、『私=低能なゴミムシ』だと言いたいのだ。
「いやいや・・・。探偵って言っても、そんなに凄いことはしてないよ。」
「ううん!やっぱり、私は弥子ちゃんに憧れる!!」
ちゃんは、相変わらず、キラキラと輝かしい目で、こっちを見ている。
・・・何を勘違いしているのか、ちゃんにとって、私は憧れの人らしい。中学時代は、この食欲に感動された。・・・・・・本当、不思議な子だ。だけど、褒められて、私も嫌な気はしないから、ちゃんのことは好き。今日会えたのも、本当嬉しいよ。久々に会えたから、もっと話がしたいと思う。・・・だけど、私の脳裏には、ラーメンが・・・・・・。
「ちゃんは、今から何処かへ行くの?」
そう言うと、ネウロがすっと耳打ちをした。・・・って言うか、そんなに耳を引っ張られたら、痛いんですけど!!
「(ほんの少しだが、謎の気配がする・・・。コイツについて行くぞ。)」
ラ、ラーメンは・・・?!!なんて、言いたかったけど、そんなことを言えば、必ず殺されるから、黙って頷く。それに、ちゃんが事件に巻き込まれるかもしれないのに、呑気にラーメンなんて食べてる場合じゃないしね!・・・・・・でも、食べたかったなぁ。・・・うん、明日にしよう!
「あそこのラーメン屋に行こうと思って。」
「・・・本当に?!!」
やった!ちゃん、ありがとう!!・・・と思ったけど、ネウロがラーメン屋について来る時点で、ラーメン屋で事件が起きるのは間違いない。そして、その周辺を歩いていたちゃんにも謎の気配があったのなら、それらが同じである可能性は、決して低くはない。
・・・そんなこと、ネウロなら、わかったんじゃないかと思うけど・・・・・・。たぶん、私への嫌がらせだろう。一瞬でも、ラーメン屋に行けないと思わせたかっただけに違いない。くそう・・・まんまと騙された。
「弥子ちゃんなら、朝でもあのラーメン屋に行くだろうなぁと思って・・・。まさか、本当に会えるとは思ってなかったけど、来てみてよかった。」
「私も、ちゃんに会えてよかったよ。」
「本当?!ありがとう!!じゃあ、あそこのラーメン屋とかで、お話しない?・・・もちろん、弥子ちゃんが食べ終わるまで、待ってるから。」
「全然いいよ!」
「やった!すみません、ネウロさん。私もご一緒しますね。」
「えぇ、構いませんよ!それに、僕なんて、ネウロと呼び捨てで結構ですよ。」
・・・・・・本当、ネウロの奴・・・。
そんな悪態は口には出さぬまま、私たちはラーメン屋へ向かった。・・・その間、悪態を吐いていない私に、ネウロがちゃんには気付かれないように、些細な嫌がらせをしてきたことは言うまでもない。・・・・・・心の中だけなら、愚痴を言わせてくれたっていいのに。
「本当すごいなぁ、弥子ちゃんは!」
「そう?・・・次、ください!」
「ラーメンを食べてない私の気分がちょっと・・・。」
「大丈夫?」
「ネウロさんは、もう見慣れてらっしゃるんですか?」
「いえ・・・。僕も、先生の化け物並みの食欲には恐れています・・・。」
アンタに言われたくないよ、アンタに。・・・でも、本当、ここのラーメン美味しい!!本当、何杯でもいけちゃう!それなのに、あまり人気が無いなんて・・・勿体無い。
「そうなんですか?私は、いつ見ても、感動しちゃうんだけど・・・今日は・・・。あぁ、もっと弥子ちゃんの勇姿を見てたいけど、本当ちょっと疲れてきたから、外の空気吸ってくるね。」
「ごめんね?」
「ううん!大丈夫。食べ終わるまで待つ、って言ったから。」
そう言いながら、ちゃんは、またいつもの笑顔で席を離れた。・・・まさか、そんなちゃんの苦悩に満ちた表情を見ることになるとは、思ってもみなかった。
ドン!!
「キャー!!」
ちゃんが席を外してから数分後、外で、重い音と何人かの悲鳴が聞こえた。
「ネウロ?!」
「あぁ・・・。謎が出来上がったようだ。」
私たちが急いで外に出ると、そこには血の上で寝転がっている男性と、その傍で泣いている女性、そんな光景を興味津々で見ている野次馬の人たちが数人いた。
「何があったんですか?!」
「店長さん!!うちの主人が上から・・・。」
ラーメン屋の店長さんが、泣いていた女性に事を尋ね、店長さんが店の屋根の方を見上げた。
「・・・誰かいる!」
そう言うと、店長さんは急いで、店へと入って行った。私も、慌てて上を見ると、そこには、ちゃんらしき影が見えた。
そうだ、さっき外の空気を吸うと言って、ちゃんは屋上に行ってたんだ!私も後れ馳せながら、店へと戻り、屋上へ向かった。
やっぱり、屋上にいたのはちゃんで、ちゃんが店長さんと泣いていた女性に責められ続けている。
さっき、重い音を出したのは、屋上から男の人が落ちて来た音だった。そして、その男の人と店長さんは知り合いで、泣いていた女性は、その奥さんだったらしい。だから、ちゃんが犯人じゃないのかとか、自殺だったとしてもどうして止めてくれなかったのかとか、ずっと言われ続けている。
「待ってください!さっき、この子も言ったように、ドアを開けたときには、もう誰も居なかったって話じゃないですか?!」
「弥子ちゃん・・・。」
「そんなの信用できないわ!責任を逃れるために言っているだけかもしれないし。」
「・・・・・・・・・。」
「でも!!」
「何やってんの、弥子ちゃん・・・。」
「あ、笹塚さん!!」
そうこうして揉めていると、連絡を受けた警視庁の笹塚さんたちがやって来た。
「探偵ー!お前、また居たのかー!」
「こんにちは。」
「こんにちは、等々力さん。」
「・・・って、俺は無視?!!」
「実は――。」
私は、ここで起きた事件のこと、そして友達のちゃんが巻き込まれてしまったことを笹塚さんと等々力さんに説明した。(石垣さんは・・・いろいろと面倒だし。いや、もちろん、石垣さんも良い所はあるんだけどね!)
「・・・なるほどね。」
「刑事さん!この子を捕まえてください!!」
私の説明が終わると、すぐに店長さんと奥さんがそう言った。まだ、そんなことを言うのか?!
「まぁまぁ、2人とも落ち着いて。まずは事情を聞かせてもらいます。・・・等々力。こっちの2人をよろしく。」
「はい、わかりました。」
「先輩!じゃ、あの子からは俺が・・・。」
「お前は頼むからじっとしといてくれ。」
「そんなぁー・・・!!」
笹塚さんからも冷たい扱いを受けた石垣さんは、一瞬ガッカリしてたけど、すぐに等々力さんの方へ行って、邪魔を・・・・・・じゃなくて。一応、店長さんと奥さんから事情を聞いていた。
「君は、弥子ちゃんの友達なんだって・・・?」
「・・・・・・。」
「名前は?」
「・・・・・・です・・・。」
いつも通り、静かなトーンで、笹塚さんはちゃんに少しずつ質問をしていた。ちゃんも、最初は頷いたり、単語単語で答えているみたいだったけど、だんだんと笹塚さんを信用して、ちゃんと答えられるようになってきていた。
きっと、笹塚さんが励ましもしてくれるだろうと思って、その場を離れ、私も店長さんと奥さんの事情を聞くことにした。
まず、店長さんと亡くなった男性とは、昔からの知り合いだったらしい。2人ともラーメンが大好きで、お互いにいつかは店を経営したいと夢を語ったほどだった。そして、実際に2人ともラーメン店を開き、この店の近くの店長が、今回の事件で亡くなった男性。
その男性は、奥さんと店を経営していて、今日はお店がお休みだったらしい。そこで、男性は研究や材料調達がてらに散歩へ出かけた。その1件目が、このお店だった。
店長さんに相談したくて、開店前に訪れたそうだ。その後、お店が始まると、このお店のラーメンを一杯食べ、屋上へと休憩しに行った。
奥さんも、別の視点から助言ができないかと思い、夫の友達でもある、この店を訪れようとしたところ、ちょうど夫がその店から落ちてきた。
・・・ということらしい。
「では、最近様子がおかしかったことなどは・・・。」
「そんなことはないんです!だから・・・あの人が自殺するなんて・・・。」
「そうです、ありえません!!やっぱり、あの子が突き落としたんだ!・・・最近の若い者は、突然恐ろしいことをやってのける。」
結局、この2人は、どうしてもちゃんに責任を押し付けたいらしい。・・・まぁ、大切な人を失ったとき、誰かを責めれば気持ちが楽になるのはわかるけど。関係の無いちゃんを追い詰めるのはやめてほしい。そう思うと、またちゃんが心配になって、そっちに戻った。
「――そしたら、ここの店長さんと弥子ちゃんが屋上へ来て・・・。店長さんに・・・・・・・・・『何してるんだ?!』と・・・・・・。」
そこまで話し終えると、またちゃんが体を震わせていた。
「わかったよ。協力ありがとう。」
「はい・・・・・・。」
「笹塚さん!本当に、ちゃんは何も見てませんし、あの2人が言ってるようなことをするような子じゃないんです。」
「弥子ちゃん・・・。」
「別に疑ってないよ。ちゃんと、話を聞いたけど、嘘は言ってなさそうだし。それに、殺す動機も無いだろうから。・・・まぁ、今んとこ、自殺の可能性が高いと思う。」
笹塚さんがそう言い終えると、等々力さんたちがこっちに来て、笹塚さんに報告をしていた。この間も、笹塚さんたちがちゃんの近くにいてくれていたし、ちゃんも少しは安心できたかな?あの2人とも距離が離れてるから、きっと大丈夫だよね。
なんてことを考えていたら、突然後ろから襟を引っ張られた。・・・く、首が絞まって・・・・・・!!死ぬ・・・!!!
「(弥子。この謎は、もう我輩の舌の上だ・・・。)」
「(ネウロ!!今まで何処行ってたの?・・・って言うか、首絞まってるから!!)」
「ん?何ですって!先生、もうこの事件の謎を解かれたんですかー?!」
ぐ、苦しい・・・。私は何も言えなくて、少しぐったりとしていると、それが周囲には頷いたように見えたらしく、みんなの視線が私に集まっていた。
やっと、ネウロが手を離して、例の言葉を言えと言ってきた。・・・まったく、何でも命令ばっかりなんだから・・・・・・。だけど、この事件の所為で、友達のちゃんが苦しんだ。その真犯人がいるのなら、それを知りたい。だから、その言葉を私は言った。
「犯人は・・・お前だ!!」
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初書き笹塚夢でございます・・・!それなのに、笹塚さんとの絡みが少なくて、すみません・・・!(汗)
正直、笹塚さんはローテンションなので、書きにくい・・・自然とセリフが少なくなっちゃうんですよね(苦笑)。まぁ、ネウロさん・弥子ちゃんの口調とかもよくわかりませんけど・・・;;
あと、石垣さんの扱いが悪くて、すみません。でも、これは愛情があるからこその扱いなんです!石垣さんは、ああいう感じが本当に可愛くて大好きです♪
それと、少しでも原作の雰囲気を出せるように、タイトルもいつもとは違う書き方にしてみました!弥子ちゃんのセリフで話を終えるのも、らしいかなぁと。
でも、さすがにトリックとかを考える力は無いんで、困りました・・・。次の話で、トリックの説明とかを書くつもりなんですけど・・・・・・読み流しておいてください(笑)。
('08/07/11)